施工事例レポート
CASE REPORTS

中山名和道路樋口舗装工事|(鳥取県)

工事背景

国策による取り組みのひとつとして、建設土木業界で「i-Construction」施策が推し進められてきました。調査・測量・設計から施工・監督・検査・維持管理といったすべてのプロセスで、ICT(情報通信技術)を活用し、特に施工を中心に各工程で手に入れた情報を電子化して共有するなど、高効率・高精度の施工を促す新たな手法として、導入が進んでいます。戸田道路でも、2000年代から普及促進がはじまったICT施工に積極的に取り組み、着実に技術ノウハウを積み重ねているところです。



本工事は、2013年当時の普及状況などを踏まえ、「トータルステーション(TS)による出来形管理技術(土工)」について一般化し、使用原則化することでICT施工技術の定着を図る、国土交通省主導の取り組みにより発注されたもの。戸田道路でも、当時の先端領域であった「TSを用いた出来形管理技術」を軸に「MC(マシンコントロール)技術」で道路づくりに挑戦する絶好の機会と捉え、高規格道路の新説となる中山名和道路の樋口エリアにおける舗装工事に臨みました。

施工にあたっての課題

本工事は、戸田道路でも初となる本格的なICT施工案件への取り組みでした。初めてづくしのゼロスクラッチ案件だったため、「施工前には様々な申請や提出の書類を作成しなければならないのですが、ICT施工用の書式すらわからず、実はシステムの供給を受けたメーカーさんに教えてもらうところからのスタートでしたね(苦笑)。まずは情報収集に走り、すでに取り掛かっていた他社のICT施工現場に見学をお願いして足を運んだり。当初は、本当にできるのか、と不安な気持ちもありました」と、本工事の責任者である戸田道路の伊藤も振り返ります。



手探り状態で仕事を進めていく中、本工事で戸田道路が担当する区間には、起点となる赤碕中山ICが含まれるため、既設道路とのランプ部での車両通行への注意を払いながら、騒音・振動・粉塵の防止に努めることが肝要でした。



さらに、舗装部に必要なアスファルト混合物の供給体制を整えることも不可欠でした。施工最盛期には1日50~60台ペースで資材を運ばねばならず、プラントの生産体制とダンプトラックによる輸送体制の確保が、喫緊の課題となっていたからです。

導入した技術や工夫

実際の施工に着手していく中、ICT施工で取り組む下層・上層路盤づくりにおいて、「TSを用いた出来形管理技術」により、GPSの各側点の座標値をもとに設計データを作成。そのデータ連携でTSから繰り出される位置情報による自動追尾機能を、モーターグレーダーの排土板の自動制御(上下)に活用して整地しました。「それまではモーターグレーダー1台に補助作業員が3人ついて、排土板などを操作していたものが、ICT施工では補助作業員1人で済みました。気を配って動かす箇所が減り、重機回りで動く人数が減って安全確保面でも効果的でした。ベテランのオペレーターさんも最初は半信半疑でしたが、施工後半には、こっちの方が早くきれいに仕上がっていいね!と上機嫌でしたよ」と伊藤も思い返します。



同時に、赤碕中山ICが含まれる既設道路とのランプ部での施工では、関係各者との協議・連携を図り、安全確保を重点に置いた片側通行止めによる作業を実施。アスファルト混合物の供給体制については、作業人員やトラック台数、使用資材の総量など、事前より綿密に計画を立案。協力会社や取引会社のみなさんと密に打合せをとり、プラント稼働時間の前倒しなど最大限の支援にも助けられ、過不足なく適時適量の調達を図ることが叶いました。

取り組みの成果

本工事のICT施工では、大幅な生産性向上や品質確保、安全性向上につなげることができました。 例えば、従来までは水糸・巻尺・レベルなどによる丁張で、高さや幅などの出来形計測を行わねばならず、本工事の規模だと測量だけで4~5日間は必要でした。「TSを用いた出来形管理技術」では、GPSの各側点の座標値を求める50m間隔の基準点を設置する作業だけで済み、かかる日数も1~2日程度。現在では、取得データをソフトウェアで一元管理し、工事測量・設計データ・図面作成・出来形管理・その資料作成など、一連の作業に活用することも可能で、自動化・効率化が大幅に進められます。



さらに、本文中で触れたように作業人数の削減による安全性の向上も実現。「測量間違えなどの人為的ミスの削減、丁張がない側点間の仕上がり制度の向上なども図れ、想像以上の路盤の出来栄えに驚いたのを覚えています」と伊藤も評します。



それら数々の手応えを施工中に感じる中、経済産業省と国土交通省共管の公益法人によるICT施工研修会が、本工事の現場で開催されました。訪れた多くの参加者のみなさんも、戸田道路によるTSでの出来形管理とMC整地の成果に驚かれていた様子です。



本工事を皮切りに、数々のICT施工を手掛けてきた戸田道路では、各現場で得た知見や気付きなどをフィードバックしながら、新たな技術の浸透で業界全体に寄与できるよう、一層努力していく所存です。

下層路盤敷均し状況 MC使用
下層路盤転圧状況
上層路盤敷均し状況 MC使用
上層路盤転圧状況
表層(排水性)舗設状況
表層(排水性)舗設状況
表層(排水性)転圧状況
表層(排水性)転圧状況

工事概要

分野
舗装工事
採用した工法・技術
本工事の担当拠点・代表技術者
広島支店 伊藤 岳光
本工事の発注者
国土交通省 中国地方整備局 倉吉河川国道事務所
本工事の工事エリア
鳥取県西伯郡大山町八重(やえ)~石井垣(いわいがき)地内
本工事の工期
2013年3月15日~2013年12月27日
ICT施工の工事概要
工事総延長
1585m
施工幅員
10.5m
舗装面積
23940㎡
ICT施工
測量関連・TS(トータルステーション)を用いた3Dでの出来形管理技術
路盤・TS取得データ活用によるMC(マシンコントロール)技術でモーターグレーダーの排土板制御
舗装工
排水性舗装
アスファルト乳剤
プライムコート部:高浸透性アスファルト乳剤
タックコート部:付着性改善アスファルト乳剤

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