玉野地区舗装工事|(福島県)
工事背景
2011年の東日本大震災では、東北地方を中心に甚大な被害が発生しました。そこで同年、東日本大震災からの復興の基本方針が取りまとめられ、それまで国道115号バイパスとして整備されていた霊山道路と阿武隈東道路を含めた福島市~相馬市までの全線を、緊急整備することに。戸田道路でも、復興への貢献の想いを秘めながら、阿武隈東道路の開通を推し進める本工事に臨んでいます。
阿武隈東道路は、常磐自動車道と東北自動車道を結ぶ、全長約45kmのバイパス。国道115号の交通隘路区間や、雪・土砂崩れなどによる通行規制区間の解消を目指し、災害時や緊急時の輸送路を確保することが目的の高規格幹線道路として着工されています。中でも、難所が続く約10.5kmの区間を戸田道路が担当し、阿武隈東道路で最初の開通区間となりました。
施工にあたっての課題
本工事の区間である玉野地区は、阿武隈東道路で最も標高が高いエリアに当たり、急勾配の上り下りが連続する地形の上、豪雪地帯としても知られています。厳しい地形・気象条件の中で、品質や出来形、安全の確保が大きな課題となっていました。
それゆえに、当初計画より大幅な新工種の追加や数量の増工が見込まれました。しかし、改めて詳細な現地調査や設計変更に割く時間を確保できなかったため、設計しながら施工を進めることを余儀なくされていました。特に道路設備類やケーブル配管の詳細設計に関して、「条数や管径、位置を調整する管路図をはじめ、8基の電機施設、25基の標識の位置決めや構造計算などは図面がなく、ほぼ白紙に近い状況。当時は途方に暮れそうになりました」と、本工事の責任者である戸田道路の大橋は振り返ります。
また、工区内の2箇所のランプや橋梁、電機室、現道タッチ部分など、周囲への影響も複数あるため、詳細な工程管理と周辺地域への協力要請・注意喚起など、様々な取り組みも同時並行で進めなければなりませんでした。
導入した技術や工夫
いくつもの課題をクリアするため、戸田道路では大幅に増える工種や数量を精査し、クリティカルなものから優先的に施工していけるよう、随時フォローアップの会合を主催。起点側のトンネル施工、終点側の福島国道施工など、隣接工区で作業を進める工事会社とは、日々、打合せをして緊密な連携体制を敷き、作業内容や出入箇所、通行ルートの調整など、工期遵守と安全確保に向けて動きました。
その上で、道路設備類やケーブル配管の詳細設計に着手。証明設備・ケーブル敷設・電源設備・非常警報装置・CCTV・ラジオ再生設備・トンネル監視設備を担当する各電気施設会社の取りまとめ役を戸田道路が率先して務め、条数や管径、位置の調整を図り、円滑に施工が進むよう調整を図りました。
「25基の標識、8基の電機施設に関しても、走行車両から見てそれぞれが被って見えなくなるのを防ぐため、高所作業車で視野確認することも忘れません」と大橋は念を押します。
そして、冬季の路面凍結を抑制するため、作業終了時にはブルーシートで養生。翌日の施工開始時に撤去し、部分的に地盤が凍結した箇所はロードヒーターで少しずつ溶かしながら、入念に施工を進めました。
そうして本工事で採用された高機能舗装を実施。通常のアスファルト舗装の表層・基層部分に、開粒度を高めるため隙間の多い透水性の舗装用アスファルト混合物を使い、路面から雨水や雪解け水などを速やかに吸収し、当初の計画にはなかった道路の横にU字溝を設け、そこへ排水する機能を持たせています。
取り組みの成果
本工事により、雨水や雪解け水が舗装表面に溜まり難くなったため、冬季の凍結によるスリップ事故などの抑止に寄与しているものと考えています。
施工中においては、12月~2月は午前中に除雪、午後から施工と1日当たりの施工量がかなりダウンしたものの、地盤やコンクリート構造物に凍上被害を与えることなく、工期内に無事故で完成させたこと。そして、各電気施設会社に滞りなく施工を進めてもらえるよう、管路図の作成に早期から着手して取りまとめをスムーズに進めたこと。この2点への評価ポイントが、発注者をはじめ関係者の間では高く、国土交通省からは表彰状もいただきました。
「なにより地域のみなさんのためになる道路を、しっかり作りたかった。施工へ一生懸命に取り組んだのはもちろん、玉野地区風評被害払拭イベントへの会場提供や親子現場見学会、日本大学工学部向けのインターン見学会など、安全を確保した上で、開かれた現場事務所として様々な取り組みに挑みました。参加者のみなさんに喜んでもらえたことも、今ではいい思い出です」と大橋が語るように、地域に貢献する戸田道路の想いを伝えたことも、最後に記しておきます。
工事概要