墨46号路線(タワービュー通り)道路景観整備工事(その2)|(東京都)
工事背景
世界一高い自立式電波塔としてギネスブックにも掲載された、東京スカイツリー(2012年5月22日オープン時点)。伝統的な日本建築などにみられる「そり」や「むくり」を意識した独特のフォルムは、日本を代表するランドマークとして、その全高634mの威容を今日も世界中に誇っています。
国内外から多くの人が訪れる観光スポットとなった周辺エリアでは、東京スカイツリーの建設に伴って、主要道路を「まち歩き観光を楽しめる回遊ルート」として整備する取り組みがスタートしました。墨田区や公益財団法人東京都道路整備保全公社を中心に「新タワー周辺主要道路景観整備事業」が策定され、桜橋通り・言問通り・タワービュー通りの3路線で、整備事業が進められたのです。具体的には、交通量の増加に対応するため、電線類の地中化や歩道の拡幅などを推し進め、訪れる人たちだけでなく地域の住民のみなさんに、安全で快適な歩行者空間を確保・提供するためです。
その取り組みの中、特別区道墨46号路線(タワービュー通り)の整備に向けた本工事を、戸田道路が担うことになりました。
施工にあたっての課題
本工事は、東京都墨田区押上一丁目に聳え立つ東京スカイツリーから、真南のJR総武線錦糸町駅まで、ほぼ一直線の1本道が続く約1.2kmのタワービュー通りのうち、南端となる墨田区錦糸一丁目4番から同区太平二丁目8番までの延長370m区間を、戸田道路が担当しています。
絶好のロケーションに位置することから、単なる道路の整備だけでなく、周辺地域の活性化まで見据えた「コミュニティ道路化」に向け、無電柱化をはじめ歩道の拡幅や高機能化なども狙った道路景観整備工事です。
担当区間は、タワービュー通りでも一番通行量が多い箇所であるJR錦糸町駅付近をはじめ、沿道や周辺には小学校や専門学校のほか店舗や様々な施設が集中していました。通勤・通学の時間帯や週末などは、特に歩行する方が多くなる区間です。また、近隣は住宅街でもあり、住民のみなさんの大事な生活道路となっていました。
そんな環境の中、「どのように安全に、スムーズに工事を進めて行くのかが最大の課題と捉え、取り組み始めました」と、本工事の責任者である戸田道路の小笠原は説明します。
また、共同溝による電線類の地中化を終えた最終段階の路面整備ということで、取り扱いに留意しなければならない景観を意識した特別な資材を多用したり、それらを西日本のメーカーから取り寄せるなど、工程を複雑化させる要素も多数含まれていました。「こだわりの設計や、そこに込められた想いをカタチにするため、技術面はもちろんシビアなコスト管理と工程調整を図る難しさも課題でした」と小笠原は振り返ります。
導入した技術や工夫
それらの課題の解決に向け、戸田道路では事前段階から周辺地域への説明を徹底。沿道や周辺のみなさん、商店や施設へ2週間に1度のペースで工事予定を広報し、都度、必要に応じて詳細調整を行いました。時には協力のお願いも請いながら、着工から完成までの期間、誠心誠意な対応で進めています。「自動車専用道路や幹線道路のような大動脈を手掛ける場合とは異なり、地域のコミュニティ道路づくりには、よりきめ細やかなフェイス・トゥ・フェイスでの対応が不可欠。毎回3~4日かけて約1500件の方々へ、広報・お願い・調整のやりとりで奔走しました。オーバーに言えば、施工中の約半分の時間は広報に費やした感覚です」と話す小笠原の言葉にもあるように、ご不便をかけてしまうことに対し、丁寧な説明と対応で臨むことに手を抜かず取り組みました。
その上で、車道は景観性の向上だけでなく、アスファルト舗装の空隙率を高くした開粒度アスファルト混合物で多孔質構造の舗装に仕上げ、走行時のタイヤのロードノイズを逃がして抑制する低騒音舗装を実施。この構造は排水性舗装と同様のため、同時に舗装内に街渠を仕込んで雨水などを逃がし、水溜りによるハイドロプレーニング現象や水はねの抑制にもつなげ、さらにヒートアイランド現象対策の遮熱性舗装も施しました。
また、バリアフリー化に向けては、通常は5cmのところを2cm以下に収め、車道と歩道の高低差を少なく施工。歩道の有効幅員を2m以上確保しながら、ボラード(車道と歩道の境目に据える車止め)などの関連施設の配置を行って歩道を拡幅し、横断勾配を可能な限り1%以下として整備しています。
取り組みの成果
「設計図面を手に現地調査を入念に行い、図面からは聞こえてこない沿道住民の声や、見えてこない現況をつぶさに把握。例えば、ボラードの設置に関しては、道路に接するガレージや商店など、車の出入りも想定しながら、計画より最適化した施工で配置していきました」と語る小笠原のように、コミュニティ道路の利用状況を現地の目線で捉え、歩行者優先にこだわった仕上げでまとめることで、道路利用者に対して安全で快適な移動空間を確保する施工に努めました。施工期間中の遮熱性舗装の塗布時には、商品の搬入や出荷がある沿道のお店に支障が出ないよう、現場スタッフ総出で別の場所に止めたトラックからお店までバケツリレーによるお手伝いを敢行するなど、可能な限りの対応で難を凌いでいます。
そういった積み重ねにより、無事、工期内に無事故で完工した戸田道路。その後の別区間の工事も終わり、この道路が完成した直後から、テレビ番組に何度となく取り上げられたり、インターネットやSNSでも話題になっています。タワービュー通りを訪れる方々や普段から利用される地域のみなさんから、新たなコミュニティ道路として好印象で迎えられたことにも寄与できた、と自負しています。
「自動車専用道路や幹線道路のような大規模な社会インフラはもちろん、下町の暮らしを支え、景観性や環境にやさしい道づくりも手掛けられるのが、戸田道路らしさ。経験やスキルの幅を広げたい技術者にとっての利点だと実感しています」と話す小笠原の言葉も、最後に添えておきます。
工事概要
W=11.0m