路面補修工事(25一の13・遮熱性舗装)|(東京都)
工事背景
現在、都市部を中心に、ヒートアイランド現象の影響が問題視されています。周辺郊外の自然が多く残っている地域に比べ、都市部ほど局地的に気温が高くなるこの現象は年間を通じて生じており、特に夏季において熱中症などの健康被害の増加、都市生活における不快さの増大など、放置できない課題が持ち上がっています。
全国的に対策が進む中、東京都でも路面温度を上昇させる一要因である、太陽光の一部(赤外線)に着目。それを反射する遮熱材を路面に塗布した遮熱性舗装で、ヒートアイランド現象の緩和に向けた取り組みを展開しています。
その取り組みのひとつとして、本工事も行われました。
施工にあたっての課題
本工事は、表面にクラックなどが発生している痛んだ舗装を10cm切削し、新しく舗装をし直した後に表面研磨をかけ、その上に灰色の遮熱材を塗布する工法での施工です。「ただし、2014年当時では、施工中に雨などが降った場合、完全に乾くまで2~3日はかかっていたため、天候を睨みながら予備日の確保も踏まえた上でのスケジュール組みや工程管理に頭を悩ませましたね」と、本工事の責任者である戸田道路の宮本は振り返ります。
さらに難題が降りかかります。昭和通りの中でも交通量が多い箇所であり、アンダーパス部と側道の合流箇所でもあったため、施工期間は細心の注意を払った車線規制が求められました。
また、施工区間内にはマンションやオフィスビルが密集しており、パーキングメーターも多く設置されている箇所のため、通行車両だけでなく往来の歩行者、営業中の路面店舗などへの配慮にも、充分な注意喚起が必要でした。
それらの影響を最小限度に押さえるために、夜間の施工へのシフトも考慮されましたが、長距離を行く深夜バスの走行ルートに当たっていたため、関係する運行会社への事前通達や注意喚起と共に、現場での配慮も不可欠な施工が難しいエリアでした。
導入した技術や工夫
それらの課題を克服するため、戸田道路では事前段階から周辺地域への説明を徹底。「道路づくりや補修は、影響を蒙る人との対話抜きにスムーズに進むものではありません。施工前、そして施工中と、何度となく足を運びましたよ」と話す宮本の言葉通り、ご不便をかけてしまうことに対して丁寧な説明と対応で臨むところからスタートしました。
その折衝の中で「あっ!と閃いたんですよ」と宮本は語ります。投光器などの置き場確保に難渋していた宮本は、ちょうど施工区間内の地下に東京都道路保全公社の地下駐車場があることに気付き、併せて交渉に臨みました。結果、前例のない取り組みの中、快く了承をいただき、占有機材置き場として借りることに初成功。以来、都心部での工事では、戸田道路でも何度もお世話になっています。
他にも、パーキングメーター対策として、工事開始ののぼり旗を設置。長距離深夜バス対策として、施工の分割数を増やし運行が終わる時間帯での施工など、これまでの難所施工の経験値を存分に活かしながら臨んでいます。
取り組みの成果
本工事により、夏場の車道からの照り返しによる温度が約11℃下がり、周辺地域への環境負荷低減につなげることができました。
さらに「自分が担当する補修工事は、必ず事前にハンドルを握って当該箇所を走るようにしています。どこが痛んでいるのか、乗り心地としてどう影響があるのかを体感した上で、施工に臨みます。それが、きれいに仕上げるモチベーションになっています」と話す宮本。そのこだわりは、当然、施工技術にも現れており、本工事でも痛んだ舗装を10cm切削し、新しく舗装をし直す際、仕様にはないガラス素材のクラック防止シートを敷いて舗装寿命を延ばす策を、独自に講じています。「品質にとことんこだわれるのは、戸田道路の社風。現場でのやり甲斐につながっていますね」と宮本も胸を張ります。
また、塗布材を施工する際にも、その独特な臭気の影響を鑑み、周辺の住民や利用者、特に飲食店には密な訪問を実践。「少しでも気になることがあれば、すぐに連絡ください!」と気配りも忘れません。そうした取り組みの積み重ねにより、本工事では特に大きなクレームもなく、もちろん無事故で、工期内に終えることができました。そして、東京都工事事務所から表彰というカタチでも、しっかりと評価されることにつながっています。
工事概要