世田谷区豪徳寺二丁目24番地先から
同区若林四丁目31番地先間配水小管布設替え工事|(東京都)
工事背景
古くは江戸時代にまで遡ることができ、近代においても明治・大正の時代から、東京では水道の整備が進められてきました。戦後から高度成長期にかけて加速的に規模を拡充し、今では浄水場から配水できる1日当たりの水量が686万m³の施設能力を有する、世界有数の水道施設に発展しています。
しかし、近年は「安全でおいしい水」を求める声が高まり、さらに首都直下型地震などの災害対策など、社会から寄せられるニーズの多様化が進んでいます。それらへの対策の一環として、経年劣化している水道管の布設替えも積極的に行われるようになっています。
都内で耐用年数を間近に控えた地域より、順次、耐震性や耐防錆性に優れた新たな水道管へ置き換えが進む中、23区内でも人気の高い世田谷区で、本工事も実施される運びとなりました。
施工にあたっての課題
本工事のエリアは、大部分が閑静な住宅街。しかも施工現場が1箇所ではなく、エリア内数箇所に点在しており、中には往来の激しい世田谷区役所前の商店街の歩道部だったり、資材の搬入などで慌しいマンション新築や小学校改築の建築工事前だったりと、近接環境への配慮なくして施工ができない状況でした。
加えて、施工総延長の約半分を占める道路が、幅の狭い生活道路となっており、施工中は車両通行止めにせざるを得ないことも、事前に課題として挙がっていました。
また、水道工事というライフラインの更新とはいえ、どうしても断水や通水後の濁り水が伴ってしまいます。施工中の騒音や振動も発生します。
なにかと制約が多い環境を前に、本工事の責任者である戸田道路の石田は「水道工事は、自分にとって初挑戦。でも、実は協力会社のみなさんが繁忙を極め、施工スタートが当初予定より1ヶ月間遅れるなど、準備期間のうちから、初めての仕事に挑む期待より不安の方が大きかったのを覚えています」と振り返ります。
導入した技術や工夫
そこで戸田道路では、仮配管方式による配水小管布設替えの施工で本工事に臨みました。この工法のメリットは、施工前に仮の配管を設け、水の供給を確保しながら既設の古くなった水道管を取り替えていけること。従前のように、施工中、連日同じ時刻に1週間程度、断水を余儀なくされていた工法に比べ、30分程度の断水を2回お願いするだけで済むからです。
そして、施工前より周辺地域の住民のみなさんに向け、水道工事のお知らせチラシの配布と面会訪問によるご説明を、積極的に実施。施工が始まってからも、断水や濁り水の都度、理由説明のためにチラシや面会訪問を繰り返しました。同時に、マイカーや営業車などをお持ちの場合に備え、駐車場への出入りや迂回路の確認なども徹底。「道路工事で培った経験値から、地域への周知徹底が重要と判断。町内会や自治会の長にもお声掛けするなど、何かあればすぐご連絡くださいと、施工の案内に重点的に取り組みました。数え切れないほど住民のみなさんのお宅を訪問しましたが、常に私が顔を出して対応していたこともあってか、大きな苦情は寄せられなかったです」と石田も胸をなでおろします。
また、住民のみなさんが、水道というライフラインの更新にはどういう目的や狙いがあるのかという、水道事業そのものへの理解を深めていただくために、戸田道路の独自開催によるPR説明会も実施しました。
その際、快く会場を提供してくださった社会福祉法人のみなさんが、利用者の方々と一緒に町内美化活動に取り組んでいらっしゃることを知り、施工期間中は戸田道路もご一緒させていただくことに。発案者の石田も「ホームのみなさんと一緒に遊歩道のごみ拾いなど、楽しく活動できました」と話します。
取り組みの成果
本工事により、施工地域に安心できれいな水道水が供給される配水小管が、震度7以上でも抜けない構造の耐震継手管など、万一の災害にも大きな効果を発揮するようリニューアルされました。
また、施工スタートが1ヶ月ずれたことを挽回するべく、マンション新築や小学校改築の建築工事前の現場は、効率性を優先して先方が休工する土日の作業にシフト。協力会社とタッグを組んで汗を流したのが功を奏し、結果的には2ヶ月間ほど前倒しで完工するほどの好ペースかつ無事故で、無事、施工を終えることにつなげました。
「初めての水道工事のため、施工の段取りから工法、資材、現場での動き…協力会社のベテランさんたちの身のこなしから教えられることが多く、毎日が新鮮で刺激的でした。そんな日々を送る中、ふと感じたことがあります。道路会社だけど、道路以外のいろんな施工にも挑戦できて、いくつになっても新しいことに触れられるのって、実は幸せなことなんじゃないかなって」と語る石田。このエピソードは、多彩な社会インフラの創造に取り組む、戸田道路ならではのものかもしれません。
工事概要