国道163号門真新橋町電線共同溝工事|(大阪府)
工事背景
災害時の被害抑制をはじめ都市景観の向上などを目的に、全国の都市部で加速化している電線類の地中化事業。大阪府でも、2025年の国際博覧会(大阪万博)開催に向け、幹線道路を中心に無電柱化が推進されています。
その取り組みのひとつである、本工事。現場となったのは、大阪府内でも交通量の多いことで知られる主要幹線道路、国道163号線です。区間内には、別の主要幹線道路である大阪府道2号線(中央環状線)と交わり、歩行者専用の地下道が設置された松生町交差点が含まれており、走行する車両が非常に多いことも重なって、電線共同溝の施工には難題を多く含むプロジェクトでした。
そのため、施工実績重視型として発注され、戸田道路が入札/受注することになりました。
施工にあたっての課題
当初の事業計画では、本工事は供用柱方式での設計でした。しかし、発注直前に既設電柱のトランスを地上機器方式で施工するよう変更が施され、電線共同溝の管路条数や特殊部の配置などが設計図面に反映されていない箇所が多数発生。すでに整備されている本工事区間の西側の電線共同溝との整合性を図るためにも、「詳細設計の段階で綿密な照査に加え、施工方式の検討や経路の再確認が不可欠でした」と、本工事の責任者である戸田道路の坂本が話します。
また、道路照明や交通信号機などの道路施設についても、道路管理者の管理境が入り乱れていることもあり、地中化対応済みのものと未対策の設備が混在していました。その状況整備に向け、技術的な観点や運用面からリーダーシップをとって、各道路管理者と施設管理者を取りまとめ、調整を図るのも喫緊の課題だったのです。
さらに設計変更に伴い、トランスなどを埋設する特殊部の地上機器枡について、既設埋設物が障害となる場合は、その構造・形状変更も視野に入れながらプランを練り直すことも求められました。
導入した技術や工夫
いくつもの課題の解決に向け、戸田道路では、例えば最大の難所とも言える松生町交差点での管路浅埋設においては、事前の現地調査と試験掘を実施。完工後の運用や維持管理面で不都合が発生する可能性を察知し、独自に経路変更を模索しました。
「早い段階から積極的に動き出し、コンセンサス醸成に尽力しました」と言う坂本は、発注者、各施設管理者、関連参画企業などとの事前調整を進め、発注意図を汲み取りながら多角的に課題を分析。主導的な立場から本工事を統率し、関連参画企業の既設管路を利活用して浅埋設管路を取り止めにする、新たな経路案を取りまとめていったのです。
この取り組みが、発注者の維持管理に対する不安を取り除くと同時に、難所での工程やコストの圧縮にもつながり、発注者をはじめ各関係者からの了承を得ることに。その手腕や提案内容には、高い評価が寄せられました。
また、特殊部の地上機器桝についても、箇所ごとの様々な形状変更に柔軟に対応できるレジンコンクリートを採用。既設埋設占有物の回避に向けては、定められている鋼管より曲げやたわみを持たせられる、地中埋設用可とう電線保護管への管路材変更など、戸田道路が培ってきた技術ノウハウに基づく提案を実施。こちらも同様に、施工実績重視型で選ばれた戸田道路らしい取り組みだと、高評価につながりました。
取り組みの成果
「私自身を含め、これまで戸田道路は多彩な工事を経験しています。現場はどれひとつ、同じものはありません。その、豊富な経験値や技術リソースをフル活用できるのは、技術者にとっても大きな安心材料のひとつ。
本工事のような、込み入った状況が多い現場でも、数多い引き出しに当たって誠実に対応していけば、しっかりカタチにすることができるのです」。
そう振り返る坂本の言葉からもわかるように、発注時の様々な難題について積極的に提案を行い、施工後の運用や維持管理を見越した上で最適解に導く代替案をまとめ、発注者が求める品質を上回る施工を実現したこと。そして、施工中に巡回を行い、施工区間以外の国道163号線の軽微な舗装面のポットホールなどを精査。併せて補修工事や技術アドバイスをする柔軟な対応などが認められ、本工事では戸田道路が大阪国道事務所より、優良工事等施工者と優秀建設技術者(現場代理人:山田和生)の所長表彰を受けています。
工事概要
※幹線管路のほか連系管路(各支道部の既設電柱への接続)・引込管路(国道沿道の各建屋への接続)も実施。管路埋設完了後に車道・歩道共に本復旧も担当。