糀谷駅前地区第一種市街地再開発事業公共施設整備工事|(東京都)
工事背景
大田区東部に位置し、羽田空港と都心を直結する京急空港線と、都内の主要幹線道路である環状8号線を抱える、糀谷駅前地区。これまでは古くから建つ小規模な木造住宅と、その間を狭隘な路地が縫うように走る、下町情緒あふれるエリアでした。
しかし、防災の観点からは大きな課題とされ、東京都からも機能向上が求められる重点整備地区のひとつにピックアップされていました。さらに、周辺も含めた連続立体交差事業が進捗する中、エアポートと品川のちょうど中間地点で交通アクセスの良好なロケーションから、同区の「地域の街づくり拠点」とも位置づけられ、それに対応した新たな公共施設と都市機能整備の必要性が問われていました。
そこで、1999年に街づくり研究会が発足して以来、再開発の検討が重ねられ、買い物や通勤が便利になるのはもちろん、快適でにぎわいのある駅前広場を中心に据え、商業・福祉(高齢者支援や子育て支援)・住宅などの複合的な機能を有する施設建築物として一体的な整備を図るプランを採択。糀谷駅前地区第一種市街地再開発事業という一大プロジェクトとしてスタートしました。
本工事はその一環として、施設建築物を戸田建設が、駅前広場や周辺の外構を戸田道路が、それぞれ担当する戸田建築グループでの施工となった案件です。
施工にあたっての課題
本工事の責任者である戸田道路の蔵は、入社3年目の若手からの抜擢です。「それまでは、ずっと下水道関連の現場を任されていました。本工事でも下水道本管開削工があり、そこは自信がありましたが、駅前再開発という一大プロジェクトの中で、その他領域の施工も担うことになり、ステップアップのいい機会にできるよう一生懸命打ち込もうと臨んだのを覚えています」と振り返ります。
事実、本工事の現場は、糀谷駅と環状8号線に挟まれた細長い約1.3haの区域。日常的に駅利用者や住民のみなさんの通行が多く、安全確保と注意喚起、周辺影響の抑止が最重要課題として挙がっていました。
また、施設建築物を担当する戸田建設の施工が昼間にある関係上、駅前広場などの公共施設や周辺の外構を受け持つ戸田道路の施工の大半が夜間になるなどの制限があり、「工程スケジュールの打合せを戸田建設の担当者と日々、繰り返し、お互いですり合わせながら進めました。少しでも遅れが出ると、計り知れないほどの影響がプロジェクト全体に波及しますので、とにかく神経を使いましたね」と蔵は言います。
さらに、環状8号線に面する部分での工事も発生することもあって、上記のような細やかな工程管理と安全確保が不可欠でもありました。
導入した技術や工夫
本工事は工期が3区分あり、年度ごとに第一期が下水道本管の移設、第二期が共同溝、第三期が外構や道路線形変更という段取りでした。現場を担当した蔵をはじめ、配属されたチームは入社1~3年目の若手が主体。現場の責任者として、蔵は「自分自身を含め一番怖いのは、経験が少ないことに起因する確認ミスや間違い。その撲滅に向け、過去に自分が担当した施工現場での取り組みを活かし、会社支給のスマホを活用する施策を採りました。施工に必要な図面をすべてPDF化し、いつでもその場ですぐ情報共有しながら確認できる体制で臨んだわけです」と解説します。
本工事のような一大プロジェクトでは、設計図面に加えドキュメントベースの資料が膨大になります。そのコピーを持ち歩いての現場作業は、持ち忘れや紛失などのミス誘発につながり、その積み重ねが工期に影響するのは必至。その対策として、独自の取り組みで対応したカタチです。
また、施工でのミスや間違い抑止に向け、蔵が社内で先輩に教わった、NETIS登録の作業者一人でも測量ができるシステムを採用。さらに、新設するバスロータリー部で、設計強度を出すために地盤改良を実施する際、支持力強度の測定を自主的に行うために、リアルタイムで各種の測定値がわかる簡易支持力測定器も採用。そこまでする必要がない部分も疎かにせず、万全の体制で臨んでいます。
もちろん、施工の前後には周辺へのPRと安全確保に最大留意して、現場作業に取り組んだのは、言うまでもありません。
取り組みの成果
蔵による独自の情報共有への取り組みで、本工事ではペーパーレス化が促進。現場で若手スタッフたちに余計な手荷物を持たせなくてよくなり、煩わしさから開放され機動力が増しました。
また、測量が苦手という若手の社員にも、簡便かつ正確にポイントが出せるNETIS登録機器の採用で、測量ミスをほとんどなくすことにもつなげました。
そういった作業環境の整備に尽力したことで、経験の少ない若手社員たちの間にも余裕が生まれ、昼夜にわたる施工でもチームワークよく対応することができたようです。「完工時に、発注者や戸田建設の担当者から、期間内に無事故でよくやってくれたねと労っていただき、全員で喜びました」と蔵も満足げです。
戸田道路では、新卒入社の若手社員たちをはじめ、技術者たちの独自性や自発性を大切にする育成方針で、個々の成長をサポートしています。「まず自分が動かないと、現場は動きません。その基本を1年目から体感していた自分が先頭に立って、創意工夫を実践していくことが、後輩たちへのアドバイスにつながると思っています。まだまだ数年の経験値しかありませんが、それでも改善できることがあるんだ、と実感してもらい、よし自分も!とつながっていけば嬉しいですね」と語る蔵のような若手が育つのも、戸田道路の魅力のひとつです。
工事概要
第二期 2015年6月11日~2016年3月15日
第三期 2016年5月9日~2017年3月31日